木村敏・檜垣立哉『生命と現実』

生命と現実    木村敏との対話

木村敏・檜垣立哉『生命と現実―木村敏との対話』河出書房新社、2006年。

かなり難解。とくに対談者の檜垣さんの議論が難しかった。西田幾多郎やドゥルーズなどの哲学について基本知識がないので当たり前か。木村さんが臨床場面をもとに語っている部分はある程度は理解できる。

木村さんのあとがきである「対談を終えて」に込められている危機感、というか精神医学の現状に対する問題意識が強く印象に残る。少し引用。

二十世紀の後半から二一世紀にかけて、精神医学は「心の医学」から「脳の医学」へという、大きな曲がり角をまわってしまったように思われる。
[中略]
最近の二、三十年のあいだに、この動き[水上註:精神医学の自然科学化]はますます加速している。人間の心の動きをすべて中枢神経系の物質過程に還元し尽くそうとする唯物論的グローバリズムが、医学界全体の業績至上主義と波長を合わせて、猛威としかいいようのない圧倒的な力をふるいはじめている。(210 -211頁)

おそらくは、ハーバーマスやホネットの近年の議論も、上記のことが一つの背景になっていると思う。