カテゴリー別アーカイブ: 研究

見えないこと

Unsichtbarkeit. Stationen einer Theorie der Intersubjektivitaet.

備忘。

ホネットは、「不可視性」を、1920・30年代のアメリカを舞台にしたラルフ・エリスンの小説『見えない人間』を素材に論じている。ホネットが着目したのは、人種差別的な侮蔑行為だった。

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

この「不可視性」が現在の問題であることは、湯浅誠氏の『反貧困』でふれられている。そこでは貧困の最大の特徴が「見えにくさ」であると指摘されている。それは、貧困問題が問題として取り上げられにくいことや政府行政が実態を把握しようとしないことだけではない。「文字通り姿や顔が消される、という意味でもある」(86ページ)。

その例として、ケン・ローチ監督の映画『ブレッド&ローズ』での描写やポリー・トインビー『ハード・ワーク』の一節が引用されている。しゃがんでいるビル掃除人の頭上を会話を途切れさせることなくまたいでいくビジネスマン、官庁街で乳母車を押して歩く保育助手を無視するエリートたち。そこでは「透明人間」になっているとされる。

たしか、ホネットは、テニスの試合を物象化の例にしたことを不正確であったとし、より適切な例として戦争行為を挙げていたと思う。しかし、そのようにいわば特殊化してしまうと、逆に「不可視性」概念(あるいはホネットが再構成した意味での物象化概念)の射程を狭めることになるかもしれない。

と同時に、しかし、たとえば「儀礼的無関心」との関連や、「不可視性」ないし物象化の社会病因論など、もっときめ細かな議論が必要になると思う。「不可視性」の現象学はそれ自体まだ展開途上と言えるかも……。いや、当たり前ですね 😐

3月のホネット氏

各所でアナウンスされているホネット氏の来日。日程は下記の通りかな。

ちなみに、ホネット氏は、3月7日(日)にはイスラエルのテルアビブ大学で講演するようです。PDFファイルでの案内はこちら。講演の題目は「諸国家の間の承認――国際関係の道徳的基層――」。

ホネット氏が承認論を、国家間の国際関係にまで広げて考察するのは、もしかすると、これが初めてかもしれません。かなり興味深いです。2000年代の承認概念の彫琢によってこういう議論展開が可能になったと言える気がします。単なる印象なので違うかもしれませんが……。

2010年春のSuhrkamp刊行予定書籍

Suhrkampの2010年春の刊行予定書籍が、サイトに掲載されていました。Suhrkamp Insel Home Suhrkamp Wissenschaft Frühjahr 2010

注目は下記の2冊かな。

アクセル・ホネット『自由であることの苦しみ』

自由であることの苦しみ―ヘーゲル「法哲学」の再生 (ポイエーシス叢書 59)

未來社から、ホネットさんの訳書、『自由であることの苦しみ―ヘーゲル「法哲学」の再生』が刊行されたようです。未來社のサイトの詳細ページは次です。

自由であることの苦しみ – アクセル・ホネット 著 / 島崎隆 明石英人 大河内泰樹 徳地真弥 訳|未來社

討議と人権―ハーバーマスの討議理論における正統性の問題

同じく未來社の右の新刊もチェックしないと……。

Rueckkehr der Gesellschaftstheorie

Rückkehr der Gesellschaftstheorie

Rückkehr der Gesellschaftstheorie

12月3日から5日までフランクフルト大学で開催されるカンファレンス。テーマは「社会理論の帰還:対立のなかの批判的社会研究」。フランクフルト社会研究所、ハンブルク社会研究所、ミュンヘン「再帰的近代化」特別研究分野の共同開催。

プログラムを見ると興味深いテーマが並んでいますが、やはり注目は、一日目に行われるパネルディスカッション「批判的社会理論のキー概念:リスク、承認、暴力」ですね。ウルリッヒ・ベック、アクセル・ホネット、ジャン・フィリップ・レームツマが登壇します。

ホネットさんは、ベックの「センス」は評価していますが、その「理論」に対しては、いろんなところでちょこちょこと批判的な言及をしていたかと思います。二人がどんなやりとりをするかは、なかなか興味をひかれます。

あと、ホネットさんの発表内容も注目されます。タルコット・パーソンズの近代社会分析を承認の社会理論の側面から捉え直し、そこから出発して、20世紀末から現在までの社会における承認領域と承認闘争の変化を考察するというもののようです。

ホネットさんの最近の文献でもパーソンズの名前がちらほらと出て来ていましたが、それなりに大きな位置づけになるのかもしれません。

今回のカンファレンスの内容は、たぶん、来年かさ来年には書籍にまとめられるのではないかと思います。

ハーバーマス・アルヒーフ

Study in Germany – ハーバーマスがフランクフルト大学に著作草稿や学術書簡の寄贈意思表明 (01/11/2009)

フランクフルト大学にハーバーマス・アルヒーフができるようです。

……ハーバーマス名誉教授は、……学長に宛てた書簡で、50冊を超える著書の草案・草稿類、学術書簡などからなるアーカイブを、同大学に寄贈する意向を伝えました。

フランクフルト大学のプレスリリースは、次かな。Habermas überlässt sein Archiv der Goethe-Universität – Goethe-Universität

Sozialphilosophie und Kritik

Sozialphilosophie und Kritik

ホネットさんの60歳記念論文集。7月頃に刊行されていた。寄稿者は32人。ナンシー・フレイザーやマイケル・ウォルツァー、チャールズ・テイラーといった、日本でも名前が知られている研究者も原稿を寄せ、総ページ数は700ページを超えている。ホネットさん自身の論文はない。

読んでみたいものがいろいろあるが、まずは「第一部 承認の諸パースペクティブ」からかな。

未來社からホネットの翻訳

未來社

アクセル・ホネットの邦訳書、『自由であることの苦しみ――ヘーゲル「法哲学」の再生』が近いうちに(?)未來社から刊行されるようだ。未來社のウェブサイトの西谷社長日録 を見ていたら、そのような記述があった。

Leiden an Unbestimmtheit. Eine Reaktualisierung der Hegelschen Rechtsphilosophie.

ドイツ語原書は右かな。